小説 | ナノ


▼ 悠灯様

「おう、入れ」
「お邪魔します」
「あ、これ」

そう言って金田一くんが紙袋を差し出してくれて「出産祝いです、遅くなりましたけど...2人分」と子供達にプレゼントを買ってきてくれていたようだった。飛空の出産前に会ったきりわたしは会えていなかったので、申し訳ないと思いながらも感謝を伝えて受け取る。足元の飛空が「なーにー?飛空くんの?ひぃちゃんの?」と紙袋が気になるようだった。

「お兄ちゃん達が、飛空と飛茉のためにプレゼントしてくれたんだよ。飛茉の分も飛空くんお礼言える?」
「おにーちゃん!ありがとう!」
「おお、...ミニ影山...」
「影山の顔でこんな笑顔でお礼言われると調子狂う」
「お兄ちゃん達はパパのお友達?」
「ああ、友達だ」

飛雄くんがそう答えると、金田一くんと国見くんは気まずそうに目を合わせた後ふわっと微笑んで場が和んだ。

飛空はさっそく子供慣れしている金田一くんに懐いたようで、頂いたプレゼントで一緒に遊んでいた。国見くんは不思議なものを見るような顔で何度も飛空と飛雄くんを見比べていた。

「やっぱり、似てますよね」
「そ、すね。中学ん時の影山思い出します」
「この前髪の感じとかめちゃくちゃ懐かしくね?」
「そうか?」

昼食の準備をしていると、飛茉が起きた声が聞こえるので飛雄くんに様子を見てもらう。ぐすぐすと泣きながら飛茉は飛雄くんに抱っこされていて寝起きの機嫌はあまり良く無いようだった。

「...」
「えっ、娘?えっ、奥さんそっくり...」
「めちゃくちゃ目まんまるじゃん」
「赤ちゃんってこんな可愛いっけ?」
「いやこの子特別可愛くない?見たことないんだけど」

むすっとしたままの顔で金田一くんと国見くんを見ている飛茉。目が合うとばっと逸らし飛雄くんの胸に顔を押し付けていた。

「ひぃちゃん恥ずかしがり屋さんなんだって!」
「ほら飛茉、飛空と遊んどけ」
「...や。だっこ」
「あとちょっとだからそのまま飛茉のことお願いしていい?」
「わかった。飛茉、国見と金田一だ」

急に他己紹介をされ慌てる2人。飛茉を怖がらせないように笑顔を浮かべているが、その顔が少し強張っていてわたしはキッチンで1人で笑ってしまっていた。

「こ、こんにちは〜」
「こんにちは...」
「...」

飛茉はまた2人が話し終えるとガバッと飛雄くんにしがみついて胸におでこを押し付けていた。飛雄くんは何故か少し優越感に浸ったような様子で、2人に「勝った...!」とでも言いたそうにしていた。

「いやお前は自分の子供だろ」

国見くんのまともな意見にわたしはまた笑ってしまう。食事の準備ができたので飛雄くんから飛茉を受け取り飛雄くん達が食事を始める。「美味い!」「美味しいです」と口々に褒めてくれてほっとする。

「飛空くんも食べる!」
「さっき食ってただろ」
「や!ママのご飯!食べる!」
「ほら、じゃあこっち乗れ」

飛雄くんが飛空を膝の上に乗せ食べさせていると「すげぇ、父親じゃん」と国見くんがまた独り言を漏らすのでわたしは笑いを堪える。飛雄くんが同級生からどんな風に思われているのかが垣間見得て面白くて仕方がなかった。

「ひぃも、たべる」

抱っこしていた飛茉が下へ降りたがったので降ろすと、国見くんと金田一くんの間に立ち机の上によじ登ろうとしていた。慌てて止めようとすると、金田一くんがすっと抱き上げてくれ「何が欲しいんだ?」と話しかけてくれる。

「あれ、たべるの」
「トマト食えるのか?凄いな〜!」
「おにーたん、ありがと!」

飛茉がにっこり、と金田一くんに笑顔を見せると金田一くんの顔がたちまち真っ赤に染まって飛雄くんと国見くんが涙を流して大笑いしていた。

「や、やめろよ...!仕方ねぇだろ!可愛かったんだよ!」
「ひぃかわいい?」
「お、おう」

飛茉も照れてるようで自分の頬に手を当て恥ずかしそうに笑っていた。前に飛雄くんから彼らとの関係を聞いていたので、こんなに穏やかで楽しい時間が過ごせてよかったなぁと心から嬉しくなった。



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